起業前3 -帰京-

sakapa

2009年03月26日 02:49

数週間ぶりの東京は相変わらず、時間が忙しそうに過ぎてました。

自分はと言えば、目標のない道をゆっくりと、とぼとぼと歩いている感じ。

そうだ、とりあえず失業保険をもらおう、と新宿の職安にいってみました。

窓口で訊くと、

「離職票はありますか?」

ない、

「会社都合ですか、それとも自己都合ですか?」

そうか、自分から言い出したので自己都合なんだ、けれども自分の頭の中では会社の内部の都合で自分が辞めるようにしたんだけど、なんて思いつつ、そういう意味じゃないんだよね、って 「自己都合です」 と答える。

「失業手当は必要書類を提出して3ヶ月後から出ます、金額は基本給の6割です」

「あっ、そうなんですか」

ということは、13万の6割で7.8万か、そして何もしなければ3ヶ月は収入が無いということ、つまり、早くどこかで働かねばな。

新宿を出て、山手線で五反田の退職した会社に離職票を取りに行きました。

事務所に着くと、社長が耳掻きをしながら出て来て、「今月は売上がいいよー」って誇らしげに話してくれました、私は「あっそうですか、それはなによりです」と答え、離職票をいただいて、また、新宿へ。

手続きが終わり、「フロムA」を買って方南町のアパートに帰り早速電話。

電話をかけた先は 当時、比較的給料の良かった「リクルート」

適正試験ってのがあるようで、予約して来るように、とのこと。

翌日、新宿の支社でオール選択式の適正試験を午前中に受験。
午後、面接、いろいろ訊かれました、そしたら、こんどは別の人が出てきまして再度面接、そして、またまた今度はお偉方のような方と再び面接、そこで言われた言葉。

「適正試験の結果がかなり良いです」

ということは 雇ってくれるんか。

「ですが、気になる点がありまして、かなり独立心が強い、という結果が出ています、ご自分で仕事を始めるつもりなのではないのですか?」

「特別、考えたことはないですし、与えられた仕事は真面目に実行する自信はありますが」と返答する。

ここで少し間が空きました。

「結果は後日ご連絡いたします」

ということで、後日残念ながらと言う結果でありました。

さて、どうする?

そうだ、渋谷のハンズに挨拶に行こう、

宮益坂の路駐エリアに車を止めて、ゆっくり歩いてハンズに向かう。

目線下向き加減で数分歩いたあたりで、「坂本くん」って誰かの声が。

見上げると、前の会社での仕入先の社長さんでした。

「あっ、こんにちは」

「おぅ、会社、辞めたんだって~」
「どうだ、商品出すから、自分でやったら?」

「えっ?」
「いやそれはちょっと、お金も無いし、前の会社との関係もあるんで」

「大丈夫だよ、最初から掛けでいいし、前の会社? 今、もううちとは取引ないよ」
*掛け 信用で商品を先にもらい、代金支払いはその後の決められた日にちに支払う約束事。

確かに昨年、私がいた頃、発注したきりだったような。

「ま、とにかく今度、ゆっくりうちの事務所に遊びにおいでよ」

「ありがとうございます」

ってことでこの場は別れ、私はハンズへ行きました。

やっぱり、東急ハンズはいいお店です、いつもは納品口からだったのですが、今日は正面から、

センスの良いアウトドアグッズが躍動的にディスプレイされていて、見本には番号が、棚にはその番号と同じストックが沢山置いてあります、従業員に付きまとわれること無く自由に迷ってきめられます、質問したいな、って思って見回すと、目配りしている腕章着けたスタッフがすぐ来てくれます、複数の商品の違いや機能、仕様の違いを簡潔に説明してくれて、決して押し付けの販売はしない、ここでしょうね、ハンズの良さ、実際に取引していたので解かりますが、彼らは店頭の商品を自分らの足でメーカーを回り探してきているのです、だから詳しい、そしてお客からの「こんなものがあればいいのにねー」って言葉を聞き逃しません、夕礼や営業報告の中でマネージャーに報告を上げるのです、以前数多くのそのリクエストが私自身に回って来ました、大抵の場合、1を訊かれて10を返してきました、その積み重ねが取引金額の増加になり、東急ハンズの仕入れ担当者からの信頼をイメージづける結果となっていたのだと思います。

1Bフロアに上がった時、「あれ? 先生になったんじゃなかったの?」 って呼び止められました。

これはこれは、僕と同じ年の横田さん、*実名ではありません、現役でお勤めと思いますので。

「あんまりじゃ、ないの、挨拶なしで辞めるなんてさー」

「こんにちは」
「すいません、えーと・・・・」

「時間ある?」
「商談室いこうか」

「は、はい」

ということで、色々話しました。

横田さんは入社当時からの付き合いでしたし、一緒にディスコにいったり、サーフィンいったり、と単に取引先担当者とは違うお付き合いでしたので、自分なりの退職に至る事実を率直に話しました。

「自分で始めたら?」
「アーリーアメリカンのこんな奴、探してるんだけどさー、社長が持ってくるの、イメージが違うんだよねー、坂本さんだったら解かるでしょ、こういうの」

「は?」
そう言えば さっき偶然会った あの社長んとこの会社にあるような商品かもな。
「じゃ、明日、サンプル持って伺いますわ」

こんな成り行きで、なんとなく自分の歩く方向が見えてきたある日でした。

つづく


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