起業前5 -開拓-

sakapa

2009年04月10日 01:24

何も無いことが自由だ、と言うのかもしれない、なんて思う無職の時期だったのかな、この頃。

所持金約8万円、月末に家賃5万円、電話代、電気代払えば残金は2万弱。
しかし、一人暮らしということもあり、なんとかなる、と楽観的な私でした。
お金が無いときは1週間、毎日カレー作戦が定番、米さえ買っておけば大丈夫、そんな生活が知らず知らず身に着いていました。

そんな生活が始まろうか、と思ったとき、ある電話がありました。
大阪でポストカードを作っている会社「ギャラリーインターフォーム」の山口社長から、
「ハンズさんから聞いたでー」
「なに、会社辞めたんかいな」
「今週、金曜、東京いくよってな、時間空けとってくれまっか」
「そやな、渋谷のハンズでどや?」
相変わらず一方的にしゃべりまくりの、予定は決定済み、っていう大阪人にありがちの段取りにこちらも乗っかって、渋谷のハンズで待ち合わせ、でハンズの前のチャールストンカフェで打ち合わせをすることとなりました。
話の内容は、東京での販路開拓を考えているギャラリーインターフォーム社の営業代行をしてくれないか、ということ。
当時はポストカードというカテゴリが少しづつ広がりかけている時期でして、都会的な写真を質感のある洋紙に印刷したこちらの会社のポストカード、私の個人的な好みで言うと支持するテイストでした、市場では浅井慎平のフォトポストカードが人気だった頃でしたが、人気アーティストではない作家もののポストカードはまずバイヤーの発注リストに載せることが市場デビューの第一関門でありました。
お話しを頂いた時点では正直、インターフォーム社は苦戦の連続ということで、ハンズとは取引がある(私の前の会社経由)がそれ以外は青山のオンサンディースぐらいしかなく、その他は未開拓であったのでした。
無職の私には断る理由はなく、1週間ぐらいで名刺とサンプル、カタログが送られてきました、もちろん報酬は100%営業受注による売り上げの歩合(約30%)です、営業経費の自腹出費はあるものの、商品の在庫リスクが無く、自分の嫌いな商品を売るわけではないのですぐ動きました。
最初に向かったのは先方のリクエストでもあった銀座「伊東屋」さん、
老舗の文房具屋の一言では言い表わすことの出来ない良いお店です、山口社長が2年がかりで営業するも、取引口座を頂けないお店ということでした(後で聞きました)

「あの、お忙しい中、申し訳ありません、商品のご紹介をしたいんですがー」
と店頭からいわゆる飛び込み営業、
すると、店舗裏にある別ビルの3Fの営業部を案内してもらいました、スタッフの対応はとても丁寧でした、ノーアポイントの若造であるにもかかわらずです。
「今日はたまたま時間が空いていたので、お通しいたしましたが、次回からはアポイントを取った上でお越し下さい」
ほんとうにその通りです、失礼いたしました、
「次回よりその様にいたします」とかしこまって返事をし、サンプルやらカタログを机の上に広げました。

「インターフォームさんね、何回か社長さんがお見えになりましたよ」
「結構、いい商品だとは思うのですが、口座を開設するほどのインパクトがね」
と女性の商品仕入れ担当の四條さんが微笑みながら答えてくれました。

(なんだ、営業に来たことあるんやないの、そんで、断られたから僕に行けってことかい?)って心の中で思いながら、私も笑顔で、
「今、どんな商品がいいんでしょう?」
と率直に聞いてみる。

四條さん、笑いながら 
「後でうちのお店をよく見ていってください、そしたら解りますよ」

「は、はい」

お礼を言って、商談室を出る、そして1時間ぐらい店内をチェックしました。

なるほど、仰る通りでホールマーク社やコンケラー(英国製コットンペーパー)なんかがとても品良く並べられていて、ハンズとはまた違った商品品揃えの奥行きを感じさせられました。
こりゃ凄いわ、って思う一方、こういうお店と是非取引したい、って強く思って銀座を後にしました。

次に向かったのは青山の「オン・サンディーズ」
こちらは以前、ハンズの担当者と一緒に来たことがありまして、営業代行の部分ではなく、イチ個人として伺いました。
ポストカードが木の箱にインデックスで仕切られた状態で相当な種類と枚数置かれています、こちらも個人的にお気に入りのお店です、2時間ぐらいいても飽きなかったですね。
この日は、店主の渡利さんが声を掛けてくれて色々輸入ポストカードの説明をしていただきました、この時期に、ということもあり私の商売の基本プログラムに結構良い刺激になったことを今でも覚えております、有り難うございました。

そんなこんなで 本日営業売り上げ¥0 で帰宅。

しかし、自分にとっては機嫌良く眠れる いい一日でした。

つづく。

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